歌舞伎を観てきた。
友人がチケットをもらったそうで一緒に行く人もいないから、とその恩恵に預かった形である。

私は歌舞伎に関しての知識はまずゼロである。
去年だったか一昨年だったか忘れたが、これまた他からチケットをもらった母親と一緒に観に行ったが、その時も知識ゼロで観劇したものだった。
小中学校とかでは校外学習の一環で観にいくことも多いそうであるが、私の通っていた学校は歌舞伎ではなく能を観に行ったし、その能観劇ですら中学受験の日程と重なって行くことができなかった。
このようなわけで、人生2回目の歌舞伎である。
前回が明治座での観劇だったから歌舞伎座は初めて。
東銀座駅直通で、幾度となく目にしていた荘厳な建物であったが、初めてその内部に足を踏み入れたのであった。
今回の演目は3本だて。
最初の2本はそこそこであったが、3本目に痛く感動したのでその感動の薄れないうちに記録しておこうと、今これを書いている。

3本目の演目は「極付幡随長兵衛」
繰り返しになるが私は歌舞伎知識ゼロである。これから書く内容ももしかしたら的外れかもしれない。それでも責任は負うつもりもないので悪しからず。
このお話、どうやら結構有名な話だそうで。歌舞伎やら講談やらの演目として親しまれているそうな。
河竹黙阿弥の世話物ということ。
まあ流石に河竹黙阿弥くらい知っている。日本史の授業でやったので。
物語の始まりは劇中劇。狂言の観劇の場。
当時の劇場では人々が酒を飲ん飲みながら観劇していたそうで、客同士の諍い、舞台に上がろうとする酔っ払いなど、客トラブルが度々起こっていたようである。
今作も、始まりは花道で喧嘩する酔っ払い。仲介役が宥めるも甲斐なく、舞台は台無しになる。酔っ払いは白柄組の侍、江戸時代の旗本水野何ちゃらの家来である。
狼藉を働く白柄組の侍を諌めたのは主人公、 幡随長兵衛。見事な剣術で侍を叩き出す。しかし酔っ払い侍の頭領、水野何ちゃらもこの舞台を観ており、自身の顔を潰した長兵衛に対して恨みを募らせる。
幡随長兵衛は市川團十郎が演じていた。元海老蔵。客席の間を通って登場したのだが、たまたま通路側に座っていた私の真横を通った。その距離10センチくらい。びっくり〜
颯爽と私の横を駆け抜けていく團十郎、驚いたのはその匂いであった。
嗅いだことのないような匂いだった。観劇中は白粉か何かの匂いなのかしらと考えていたが、調べたところお香みたい。
まあどちらにせよ、結構衝撃的な登場で、一気に引き込まれたのである。
酔っぱらい乱入のシーン周辺はコント色が強く、客席からも笑い声が上がっており、和やかな雰囲気であった。
そして團十郎の客席からの登場は舞台と客席の境界を曖昧にするようであった。あたかも実際に客の1人が痺れを切らして立ち上がったかのような感じ。
夢の中で見た夢と、夢の境界が曖昧になるみたいな不思議な感覚…
さてさて、ということで長兵衛は帰宅する。
長兵衛は町奴の頭領。平和な世で不満のあまり横暴な振る舞いに走る旗本家らから町人を守るような人々らしく、旗本家から目の敵にされていたそう。
舞台のシーンで顔に泥を塗られた旗本水野は長兵衛を屋敷に呼び出し、殺害しようと企てる。
水野の家臣が長兵衛の自宅に赴き、長兵衛を自宅に招いた時点で、彼も自分が殺されるだろうことを悟る。
招待に応じなければ町奴の頭領としての面目が潰れることもあり、死を覚悟で呼び出しに応じる。
妻、幼子、子分たちとの別れを惜しみ、棺桶を水野邸に運び込むよう頼むなど、完全に死ぬ気である。
ストーリーを全く知らずにいた私はこの時点でハラハラドキドキである。
死なずに済むか、殺されたのち部下たちが仇討ちに燃えるか。
江戸の人は仇討ちもの好きみたいだし後者かしら、なんて思いながら、場面は変わり水野邸へ。
長兵衛をもてなす水野。油断させようとする作戦だろうが、人格者たる長兵衛は全く気を緩めることない。
木刀を持たせ長兵衛の剣の腕前を推し量る水野。これはなかなか手強いかもしれないと悟り、無理やり風呂に入るよう勧める。
風呂場で無防備になったところを襲うのは明らかである。
しかし、断りきれない長兵衛。予想通りに風呂場で長兵衛に襲いかかった水野の家臣らを楽々倒したものの、槍を持った水野本人と、水野の友人(名前は知らん)に追い詰められる。
棺桶を持った長兵衛の子分が到着したとのことで、殺すには惜しい潔さだと感心した水野。
しかし、水野は長兵衛にトドメを刺すのだった。
うっそマジで!トドメ刺すの!?
普通この流れ感心して仲良くなってって感じじゃないの?
呆気に取られながらもそのまま幕。
仇討ち編始まるかという微かな期待も虚しく、イヤホンガイドから流れる、そのあと水野は切腹を命じられ仇討ちはできないで終わったという解説。
最後の呆気なさに呆気に取られたが、しかし歌舞伎って面白いんだな〜と感じたお話でした。
ところで一緒にいた友人は一本目が終わったタイミングで映画観に行くわ〜と言って帰っていった。
まじかよ…勿体なさすぎる…超おもしろかたのに…