非日常に生きる彼の話
木曜5限、必修の中国語の授業を受けてる最中、ある友人から、今日夕飯を一緒に食べないかという誘いが来た。会うのは2ヶ月ぶりくらい。
この友人、高校時代の同級生で、いつも他の一人を交えた3人で一緒にいた。高校在学中からインターンやらなんやら、私にはよくわからないようなことに果敢に挑戦する、知らない人にもどんどん話しかけるといった性分で、当時からすごいやつだと感心していた。まあ時間にルーズだったり、ゴミをポイ捨てしたりなど、私をドン引きさせるような言動も少々あったのだが…
さて、そんな彼、大学入学後にサークルにも入らず、おしゃれなレストランでのバイトに勤しみその持ち前のコミュニケーション能力で、業界内に次々と知り合いを増やし、その辺の大学生とはかけ離れた収入と顔の広さを手に入れている。
その彼と、20時に麻布某所で待ち合わせる約束をし、私は授業終了と同時にいそいそと電車で麻布に向かったのだった。
しかし、高えよ、麻布。敷居がよぉ。
そこらの大学生がほいほい遊びに来る街じゃねえだろ…
家からあまり遠くない大学にはほぼパジャマのような格好で通っているから、直で麻布、きつーい、と思わないこともなかったが、なにせ私は青山をジャージで闊歩する男。そんなこといちいち気にしちゃあいません。
ところで、ここ最近彼と飯を食いに行くたびに感じる。彼、時間通りに集合場所に現れるようになった。彼の進歩に驚くと同時に少し寂しいような気もする。
レストランでおいしい料理でもがっつり食べるのかと思いきや、どうやら向かった先はスウィーツ専門店。彼の知り合いのシェフが新しくオープンさせた店だそうだ。
おいしいモンブランをいただきました。
モンブランをフォークで切り分けながら、そしてなかなか口にすることのないお高いスウィーツを味わいながら、彼はもう自分とは全然違う世界に生きているのだなぁと、しみじみ思ったのでした。